私はその時病気でハードな仕事ができなくて、その仕事を紹介された。
その衣料店では奥のガラスケースにルイヴィトン(っぽい)のキーケースやシャネル(っぽい)の財布なんかが置いてあった。
表には格安のニットやスラックスが置いてあった。でも意外に奥のガラスケースのルイヴィトン(風)のキーケースやシャネル(風)の財布目当ての客が多かった。「このカラフルな色み、お客様にお似合いです」「これ安くならへんの?」「え、あ、だいぶお安くさせていただいてるのですが…店長に聞いてみます」「ほな、ええわ」客も、私も、茶番である。
時給は悪くなかった。店長は物腰の柔らかなロマンスグレーの紳士だった。私は店長に聞いてみたことなどなかった。
何がどうなってそうなってるのかよくわからなかった。何がどうなってそうなってるのかなど知らなくてよいことがたくさんあるのだ。